―エレベーターの奇行映像が示す“何か”とは?―
第1章:事件の概要
2013年1月、カナダ・バンクーバー出身の大学生エリサ・ラム(Elisa Lam/21歳)が、アメリカ・ロサンゼルスにあるセシルホテル(Cecil Hotel)に宿泊しました。
しかし、宿泊から数日後、彼女は忽然と姿を消します。
そして3週間後、ホテル屋上の貯水タンクから全裸の遺体として発見されました。
この事件は、
・監視カメラに映った不可解な行動
・屋上の構造上の謎
・心霊・陰謀論的な噂
が絡み合い、世界中のネットユーザーを巻き込む大事件となりました。
第2章:失踪の経緯と最後の映像
エリサは2013年1月26日にロサンゼルスを訪れ、セシルホテルにチェックイン。
このホテルは安価でバックパッカーに人気でしたが、過去に多くの自殺・殺人・薬物事件が起きた“曰く付きの場所”でもありました。
そして1月31日、エリサは突然連絡が取れなくなります。
彼女の最後の姿が確認されたのはホテルのエレベーター監視カメラ。
その映像が公開されると、世界中が衝撃を受けました。
- エリサは何度もエレベーターのボタンをすべて押し、
 - ドアの外に向かって誰かを警戒するように身を隠し、
 - まるで見えない何かと会話しているかのように手を動かしていました。
 
そして突然、姿を消す──
この奇行映像はYouTubeで数千万回再生され、「悪魔に取り憑かれた」「誰かに追われていた」などの憶測を呼びました。
第3章:発見までの3週間
エリサが行方不明になってから約3週間、ホテルの宿泊客から**「水の出が悪い」「味がおかしい」「黒い色が混じっている」**という苦情が相次ぎました。
その点検のため、2月19日にホテルの清掃員が屋上の貯水タンクを確認。
その中から、全裸のエリサ・ラムの遺体が発見されたのです。
発見当時の状況:
- タンクは鍵付きの屋上扉のさらに奥に設置されていた
 - タンクの蓋は重く、通常は閉じられたまま
 - エリサの服はタンク内で一緒に発見されたが、着衣していなかった
 
この状況から、「彼女は自分で入ることができたのか?」という疑問が浮上します。
第4章:屋上の謎と物理的矛盾
セシルホテルの屋上は、一般宿泊者が自由に出入りできる場所ではありません。
鍵付きのドアと、侵入者警報システムが設置されていました。
つまり、彼女が1人で屋上まで行くことは極めて困難です。
それにもかかわらず、
- 防犯カメラに屋上に向かう映像は存在しない
 - タンクの蓋は発見時は閉じていた(=他者が閉めた?)
 
この点から、誰かがエリサを屋上に連れて行った可能性が一時期強く疑われました。
第5章:検死結果と公式見解
ロサンゼルス郡検視局の結果はこう記録されています。
死因:偶発的溺死(accidental drowning)
外傷・性的暴行の痕跡なし
薬物の影響も軽度
ただし、エリサは**双極性障害(躁うつ病)**の治療を受けており、当時の薬の服用状況には不整合がありました。
薬を飲み忘れていた、または過剰服用していた可能性が示唆されています。
そのため、精神的混乱状態の中で自ら屋上へ行き、誤ってタンクに落ちたというのが公式見解です。
しかし、映像や屋上構造から「偶然では説明できない」という反論も根強く残っています。
第6章:セシルホテルの“呪われた歴史”
このホテルは、エリサ以前から異常な事件の温床として知られていました。
- 1950〜80年代にかけて複数の自殺・他殺事件
 - 連続殺人鬼「リチャード・ラミレス」や「ジャック・ウンターウェガー」も宿泊
 - 多くのオカルト・心霊番組で“呪われたホテル”と呼ばれる
 
そのため、エリサの不可解な行動や死も、「セシルホテルに宿る何かに導かれた」とする説が世界中のオカルト愛好家の間で広まりました。
第7章:ネット上の反響と陰謀論
映像が公開された2013年以降、世界中の掲示板・SNSで議論が爆発。
代表的な噂には次のようなものがあります。
- 霊的現象説:「見えない誰か(霊)と会話していた」
 - 他殺説:「ホテル従業員や宿泊者が関与」
 - ウイルス実験説:「当時の“結核流行”と同時期で、事件が隠蔽工作だった」
 - “ダークウォーター”との符合:偶然にも事件前年に『Dark Water』(邦題:仄暗い水の底から)の映画が公開され、娘が貯水タンクで死亡するという酷似した設定が話題に。
 
これらは事実確認が困難なものも多く、ネット上の「都市伝説」として独自に拡散されていきました。
第8章:Netflixドキュメンタリーと再評価
2021年、Netflixがドキュメンタリーシリーズ
**『消えた天使:エリサ・ラム事件(Crime Scene: The Vanishing at the Cecil Hotel)』**を配信。
この番組では、事件を「ミステリー」としてではなく、
メンタルヘルスの問題とネット世論の暴走に焦点を当てています。
- 事件を過度に憶測したネット探偵たちの暴走
 - 精神疾患を持つ若者の現実
 - “心霊ホテル”としての偏見の広がり
 
これにより、事件は「社会的風潮とネット文化の象徴」として再評価されました。
第9章:事件が残したもの
この事件は、単なる不可解な死では終わりませんでした。
それは、私たちが“真実を追うこと”と“憶測で他人を傷つけること”の境界を問いかける事件でもあったのです。
エリサ・ラムの死は、いまだ多くの人々に謎を残しながら、
「孤独」「心の病」「ネット社会の闇」という現代的テーマを浮き彫りにしています。
🏁 結論
セシルホテルの屋上にたどり着いた若い女性。
奇妙な映像、閉ざされたタンク、そして沈黙した真実。
それらが示すのは、不可解な死の裏に潜む、人間の脆さと社会の冷たさかもしれません。

  
  
  
  
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